こちらのページでは北海道にて裸足ランニングを普及している校長先生のブログ記事を少しでも多くの方に読んで欲しいと了承をいただいた上で紹介しています。
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【はじめに】
私が裸足に出会ったのは4年も前になるだろうか。
マスターズ陸上のアジア大会に参加するために、老体にむち打ち、ハードなトレーニングをしていました。そんな無理がたたって、膝に痛みが・・・・・・。加齢のせいとあきらめるべきなのかもしれないが、体に負担が少ないトレーニング方法はないかと探していたときである。
「裸足」で走れば、体の負担が少なくなる?
嘘でしょ! 「裸足になるだけで何が変わるの?」 と思いました。逆に体への負担が増えるでしょ!
日本ベアフットランニング協会の吉野さんの本を読み、メールで質問をしまくり、実際にやってみた。
「マジ?」 なにこの感覚。
いつしか膝の痛みが消えていた・・・・・・。
それどころか、なにこの体のバネを使う感覚・・・・・。よく、スポーツ選手が体のバネを貯めないと言うことがあるが、その正体は定かではなかった。それどころか、体の使い方によってバネが感じられる。
そこから、4年が過ぎようとしている。裸足に取り組んで、裸足の奥の深さ、運動としての原点、一流選手の動きの中に裸足で身につく体の使い方が使われている・・・・・・・。
裸足の講習に出かけると、「本を出していないんですか?」「DVDありませんか?」と聞かれることが多くなってきました。そこで、自分の経験したこと、自分が得た知識、裸足の取り組みによる効果、情報、研究など、これらを今一度整理をしていきたいとこのブログを書き始めることにしました。
【子どもの体力低下はどこからくるのか】
子どもの体力の低下が話題となって久しいですが・・・・・・。
では、
いつから子どもの体力が低下したのでしょう?
上のグラフは、文部科学省が出している体力テストにおける男子の1500m走全国平均の経年変化のグラフです。
昭和50年代前半から徐々に下がっています。1500m走が1番顕著ですが、他の種目も似たような感じで推移しています。平成22年段階では、学校教育の取り組みもあり、13歳、16歳は改善傾向にありますが、昭和50年前半から比べるとかなり低いままです。19歳に至っては、とてもひどい現状です。
この原因は、生活様式の変化や遊びの変化などと言われています。13歳、16歳については、この原因についても納得できます。運動系の少年団、部活動の加入率も下がり、放課後の過ごし方も変化してきています。さらに、19歳については1991年(平成3年)に大学設置基準改定でカリキュラム編成が自由になり、それまでは大学の体育が4年制の大学で4単位が必修であったものが、選択制にする大学が増えたのが一因でないかと考えられます。1998年時点では必修とする大学は50%(平成10年)を切っているそうです。
最近は、必修に戻す大学も増えてきているそうです。
しかし、
私はもう1つ原因があるのではないかと考えています。
それは、クッション性のあるシューズが開発されたことに起因するのではないかと思います。
クッション性のあるシューズは、元オレゴン大学陸上選手のフィル・ナイトによって開発されました。
1964年(昭和39年)、フィル・ナイトと元コーチのビル・バウワーマンは、ランナー仲間に最高のシューズを届けたいという純粋な思いから、小さな会社を起こしました。
ナイトがデザインしたクッション入りシューズは日本のオニツカが製造し、1969年(昭和44年)、「Tiger Cortez」(アメリカのみで販売)という名前で発売されました。
ちょうど時を同じくしてふたりは日本の工場で独自ブランドシューズの製造を始め、このラインを「Nike」と名づけます。そうして作った最初のモデルが「Nike Cortez」です。
まったく同じシューズがブランド名を変えて販売されたのです。
ビル・バウワーマンは、
・重心よりも前に足を着地させれば、若干距離が稼げるのではないか?
・踵の下にゴムの塊をつければ、脚を伸ばし踵で着足し歩幅を長くすることができるだろう?
と考えました。
ビル・バウワーマンは、
「自身の新型シューズ」と「それまで安全に行えなかった走り方(骨ばった踵で着地すること)」を提唱し、クッション性のあるシューズを販売しました。
この戦略(新しい走り方とそれを可能とする靴のセット販売)、は、やがてシューズの売れ行きに生産が間に合わなくなるほどとなり、1972年ミュンヘンオリンピックを境に、ナイキは世界一の巨大企業となっていきます。
そして、爆発的に広まったハイテクシューズは、その売れ行きと比例するように脚の故障者も大量に生み出すことにつながります。
ここが、クッション性のあるシューズによる走り方が変化した分岐点になったと考えられます。
ちょっと前置きが長くなりましたね!
日本国内では、クッション性のあるシューズが一般に流通しはじめたのが1970年中盤以降(昭和50年)でありました。もう一度、上のグラフを見てみましょう! 昭和50年ぐらいまで緩やかに1500m走の平均タイムが上昇してきていたのが、緩やかな下降に転じているのです。
偶然の一致でしょうか??
私はここが、日本人の走り方が変わった分岐点だと思っています!
そして、子どもたちの体力低下の一因となったと考えます。
昔の日本の運動会は裸足が多く、足袋をはくようになり、ゴム1枚底の運動靴となり、クッション性のあるシューズへと変わることにより、走り方も変化してきたのです。
「裸足トレーニングにより
人間本来の動物としての動きをとり戻そう!」
【裸足の着足について】
裸足の講習をしていると1番聞かれるのが、
足の付き方(どこから着足するのか)です。
しかし、裸足で走ることを続けていると、あまり足の裏のことは考えなくなります。
もっと大切な部分があることに気がついていくからです。
(このことは今後のブログで追々書いてくことにします)
とわいえ、裸足で初めて走る人にとっては、確かに、直接地面にコンタクトする部分ですから気になるのは当たり前です。
今回はそのことについて説明していきましょう!
1番わかりやすいのは、2010年1月Nature誌に掲載されたハーバード大の人類進化学者ダニエル・リーバーマン博士の論文です。
ナショナルジオグラフィック日本版でもこの論文のことは紹介されています。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2232/?ST=m_news
自身も熱心なランナーでもある、リーバーマン博士は、ふと素朴な疑問を抱いたようです。人間の先祖が2足歩行を始めて約200万年以上経つのに対し、人間が靴を発明して約120年、そしてクッション性のある運動靴が浸透してから40年くらいしかたっていないことを考えると、2足 歩行のほとんどの期間、ヒトは裸足で走っていたことになり、それがどのくらい大変なことだったのか確かめたいというものでした。
リーバーマン博士らは、アメリカとケニアから、靴を履く習慣の違う200人を集め、3つのグループに分けました。
「生まれたときからずっと裸足で過ごし、靴を履いたことが一度もないグループ」
「小さいときは裸足で過ごしていたが、 今では靴を履いているグループ」
「生まれたときから靴を履いて育ったグループ」です。
そして、それぞれのグループに「裸足」と「靴を履いたとき」と両方で走ってもら い、その走り方のフォームや全身への衝撃の度合いなどを計測しました。
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その時の画像が上の写真です。
同じ年代のケニア人で、
黄色のシャツが「生まれたときからずっと裸足で過ごし、靴を履いたことが一度もない子」
白いシャツが「生まれたときから靴を履いて育った子」です。
着足の様子を比べてもらえばわかりますね。
白いシャツの子が靴を履くことによって身についた走り方で、黄色のシャツの子が人間本来の走り方といえるのではないでしょうか。
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その結果、
「靴を履いて走った場合、すべてのグループで踵から着地する傾向が見られた」
「裸足で走った場合、親指の付け根の母指球か足の裏全体で着地することが多い」
ということがわかりました。
そして、この着地の違いによる身体への衝撃は、
「裸足の時が全体重の0.5-0.7倍の力」
「靴を履いて走った場合、全体重の1.5-2倍の力」
が加わったというのです。
これらの結果は、リーバーマン博士の当初の予想と全く正反対であったということです。
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裸足の方が身体への負担はずっと軽いということを示唆しています。人間は200 万年かけて、最も効率がよく、身体への負担の少ない走り方を進化させてきたのです。
「子どもの体力はいつから低下したのか?」の投稿の中でも書きましたが、踵から着足する走り方は、クッション性のあるシューズとともに普及された走り方で、人間本来の走り方ではなのです。
ではクッション性のない靴なら裸足でなくても良いのかということになりますよね!
現代の道路事情は、靴を履かずして安全を確保できるほど良好ではなないので、靴を必要としているのは事実です。しかし、足の裏には手以上の数の圧力センサー「メカノレセプタ」があります。そこから多くの情報を脳に伝え体を制御しているのです。
もしかしたら靴を履いたときと裸足の時では脳の活性度合いが違うのかもしれません。
裸足で脳の認知機能が上がるという研究や学力向上なんて記事もありますから、そのあたりも関係しているのでしょう。
靴を履いたときと裸足の時の脳の活性度合いを調べる研究なんかもおもしろいのかもしれませんね?
靴を履くということは「手袋を履いて細かな作業をする」のと同じ事になるのではないでしょうか?
【縄跳びと裸足】
「縄跳び」の着足は、裸足で身につく体の使い方に近いものがあります。
近いと書いたのには理由があります。
裸足でつま先の方から着足すれば裸足で身につく体の使い方ができているか?
といえばそうではありません。 小学生に縄跳びをしてもらうと、つま先の方から着足しているのにドンドン音を立ててジャンプする子もいます。
つまり、裸足で身につく体の使い方は、着足だけで解決できる問題ではなんです。
そうそう
今回は、縄跳びにおける裸足の効果でした!!
小学校の講習へ行くと、裸足の体の使い方が身についたかどうか、わかってもらうために具体的な数値で表すことがあります。
小学校の1校時の授業時間は45分、この中で効果を出さなければなりません。
しかし、小学生は大人と違って、靴を履いた時間が短く、体の順応性が高い! 短い時間でも効果は出るんです!
それでは
どんな感じの授業か??
①軽く準備運動
②靴を履いたまま縄跳びの回数計測(時間は1分~3分くらい)
③裸足になって軽くランニング
この時点では、ドンドン音を立てて(衝撃を吸収できていない)走ったり跳んだりしている子がほとんどです。更に縄跳 びでは蹴り(体のバネではなく筋力)を使ってジャンプしていますから長く続きません。地面からの反発を使えていないのです。
④裸足で身につく体の使い方ドリル
⑤裸足で鬼ごっこ or 裸足のランニング
講習に行くとこの時点で、子どもたちより、見ていた先生方は驚かれます。
最初に行 ったランニングとは明らかに音が静かになっています。
⑥裸足での縄跳び回数計測(時間は1分~3分)
ここでも先生方は驚きます。
実質30分程度裸足の体の使い方が身につくドリルを 行っただけで、
縄跳びを跳ぶ音が静かになり、
跳び方がリズミカルになるような感じ となり、
縄跳びの回数が増えることになるのですから。
こんな感じです。
さて、ここからです。
②と③で行った縄跳びの回数をデータをとった3校の値で比較してみましょう。(他でもののような感じで行ったことがありますが、データをしっかりとったのは3校です)
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ケース1
北海道 道北地方の小規模小学校
参加児童 3年生 12名
4年生 17名
5年生 8名
6年生 17名
実施方法 3分間縄跳びをして、跳んだ回数を記録する
(連続ではなく、積算回数とする)
結 果
3年生 靴 129.9回 → 裸足 141.0回
( 8.5%up)
4年生 靴 190.6回 → 裸足 215.2回
(12.9%up)
5年生 靴 225.6回 → 裸足 275.6回
(22.1%up)
6年生 靴 201.3回 → 裸足 225.3回
(11.9%up)
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ケース2
北海道 札幌市内小学校
参加児童 1年生 47名
2年生 48名
実施方法 1分間縄跳びをして、跳んだ回数を記録する
(連続ではなく、積算回数とする)
結 果
1年生 靴 78.2回 → 裸足 89.7回
(14.7%up)
2年生 靴 88.7回 → 裸足 104.1回
(17.3%up)
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ケース3
北海道札幌市内小学校
参加児童 1年生 42名
実施方法 1分間縄跳びをして、跳んだ回数を記録する
(連続ではなく、積算回数とする)
結 果
1年生 靴 69.5回 → 裸足 82.3回
(18.4%up)
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どこの学校も1割から2割ほど回数がアップしています
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小中学生なら、継続的に「痛くない、音がしない」を基本とした「裸足」の運動場面を継続的に取り入れていくことによって裸足で身につく体の使い方を獲得していけます。
年齢が低ければ低いほど短時間で身につきます。
しかし、指導者が裸足で身につく体の使い方について知っていなければならないのです。正しい動きを知らないものが指導はできないのです。
「ドンドン音をしないように走れ」
こんな指導していませんか?
本当の指導とは
「こおやったら音がしなくなるよ」
策がある指導が必要ではないでしょうか?
実は私も策のない指導をずいぶんしてきたと反省しています(^^;)
歩きはじめた赤ちゃんは裸足で身につく体の使い方をうまく使っています。ほとんど筋力無しに股関節のとらえと重心の移動だけで歩いているんですから。
「裸足」は極力蹴りを少なくし、重心の移動と体のバネを使った動きなのです。だから効率がよいのです!
日本で昔から行われている「裸足教育」はその変化を検証してきませんでした。
つまり、健康的な側面ばかりに気をとられ、
体の動きがどう変わり、運動パフォーマンスにどの様に影響を与えるか
を検証してこなかったのです。
今、ここでいう「裸足」は、
その意味で「古くて新しい裸足」なのです。