一本歯下駄には「歯」がある(=一本下駄ではない)
一本歯下駄の台の下につけるのが「歯」。歯が一本だから「一本歯下駄」、歯が一枚だから「一枚歯下駄」。
一本下駄という「歯」をつけない、「歯」が省略された呼び方は一本歯下駄ファンとしては見逃せない(許せない)ものがある。歯がなくては話にならない(笑)。
いろいろと調べていく(参考:ウィキペディア「下駄:歯」)と、一本の木から削り出して作るのが「連歯下駄」。歯のないのは「無歯下駄」、あとから台に別に作った歯を取り付けるのが「差し歯下駄」と3つのジャンルに分けるのだそうだ。
現在、世間に出回っている一本歯下駄も、歯の高さや歯の位置、歯の形状について見ればいろんなものがある。
ノーマルタイプの一本歯下駄は歯が台のほぼ真ん中にある。
歯が台の中心から後ろにある「後ろ歯一本歯下駄(アルクトのMUSASHI)」、歯が半球状になっている「一点歯下駄(アルクトのKOJIRO)」、歯の先が細くなっている「先細り一本歯下駄」、これらはノーマルタイプの一本歯下駄とは履き心地も歩く際の感触も大きく変わる。
変わり種一本歯下駄などの種類を紹介した写真アルバムはこちら
歯の高さについて
歯の高さで見れば、GETTAのような3〜4センチ程度のものもあれば、オーダーで30センチ近くあるものも作れる。ただし、私個人の経験からすれば、普通に街歩きをするのなら10センチ程度が理想。15〜18センチくらいが限界。
それ以上の高さはパフォーマンスに使うならいいのだろうが、外歩きにはかなりの危険を伴うのは避けられない。
ちなみに「高さ」と読んでいるのは「全高」で、地面から足が乗る台の高さまでを言う。
下の写真は27センチの高さがある。さすがに履くのも脱ぐのも注意しないと大変なことになるし、路面のちょっとした突起物でグラっと来る。
高さ10センチ未満の一本歯下駄は、遠目から見ると一本歯下駄というのがわかりにくい。さりげなく一本歯下駄を楽しみたい方にはいいだろうが、一本歯下駄というのをアピールしたければやはり10センチ以上の高さのものを履こう。
歯の厚さについて
歯の厚さは平均3センチ程度。それより分厚いものは安定性はいいが歩きにくいかもしれない。むしろ薄手の歯の方が踏み出しが軽く歩きやすく感じられる。アルクトのスキャッパ、ヨガやツネは薄めの歯(約2センチ)を採用している。
歯の磨耗について
歯は磨耗する。自然素材の木でできているので摩耗は避けられない。昔と比べてアスファルトの道があちこちにあって、一本歯下駄で歩きやすくなったにせよ、一本歯下駄の歯にとってはありがたくない点でもある。
タイヤゴムや靴の補強用ゴムを貼り付けるなどして保護すれば多少なりとも摩耗は防げる。この件に関しては他の投稿でも紹介しているので参考にしていただきたい。
地面を擦るような歩き方をするとより摩耗は激しくなる。できるなら、地面を点で捉えるようなソフトな歩き方をするのがいい。
左右非対称のGETTA以外の一本歯下駄は、歯の片減りを避けるために、右と左の印(LとRなど)をつけて、定期的に左右を入れ替えるようにするといい。X脚やO脚の方は特に片減りに注意が必要。
上の写真はお友達Hさんの一本歯下駄。強烈な片減り。こうなると歯を交換するしかないのだが…
彼の素晴らしい工夫…歯をノコギリで切断。短くなったものの一本歯下駄として十分使えるようになった。
歯の交換は可能か?
一本歯下駄の歯は交換可能だが、木工職人さんに頼むのがいい。昔ながらの履き物屋さんで頼めばやってくれるところもあるのだろうが今はさほど多くないだろう。高齢の職人さんがわずかながらおられて引き受けてくれればラッキーと思う。しかし、工賃は結構かかると思われる。場合によっては一本歯下駄をまるごと買い換えた方が今の時代やすくつくこともあり得る。
そういったことも含めて、トレーニングで一本歯下駄を頻繁に履くような方にはタイヤゴムの装着をお勧めしている。これまで試してきた中で最も強いゴム素材はオートバイ用のタイヤゴム(写真上)。一本歯下駄につければかなり重くなるが、その分摩耗耐久性は最強レベル。真夏のアスファルトの上を長時間歩いても耐え得るものだ。
歯の点検
一本歯下駄にとって歯は大切なポイント。歯はこまめに点検しておこう。歯がグラグラしていたり、歩く際にいつもと違う音が聞こえたら抜ける前兆。歯と台の間に隙間やゆるみがあると下駄から下駄の歯が抜け落ちる。最悪、歯が抜けるだけでなく、歯が抜ける際に台に無理な力が加わって下駄の台が割れることもあるらしい。
差し歯の一本歯下駄の場合、 木の性質上乾燥すると素材が収縮して歯の厚みが台の隙間より小さくなるのだ。
しばらく履かずに放置していたり、履いているうちに歯が緩くなったりして抜ける場合もある。
歯が抜けたら…
万が一歯が抜けたら、鼻緒は水につけないようにして台の裏側を水に浸す。加えて歯も水につけたまましばらく放置。こうすると歯と台が水を吸って膨張する。
次に隙間に合う少し厚みのある紙を台の溝と歯の当たるところに歯と一緒に挿入、歯には当て木をして木槌やゴムハンマーで叩いて打ち付ける。無理をすると下駄の台にひびが入るので注意が必要。
下駄は乾燥した場所(暖房器具の近く、直射日光の当たる車内など)には置かず、日陰で保存。
参考:和装履物 現代屋のサイトから(一部筆者による加筆修正)
*その他の記事一覧はこちら
*YouTube動画リスト:一本歯下駄〜One-Tooth Geta
*一本歯下駄の購入はこちらで…
*ライター:
株式会社GETTA認定アンバサダー
「PEACE RUN世界五大陸4万キロランニングの旅」を走るアドヴェンチャー・ランナー 高繁勝彦
コメント