古来から日本にある履物の要となる鼻緒である。
鼻緒は一本歯下駄にとって顔や表情を作るもの。鼻緒を挿げ替えるだけで下駄のイメージがガラッと変わるのも確かなこと。
私は自分で作った鼻緒を挿げているが、一般的な鼻緒の二倍はある太さの極太鼻緒。太さだけでなくクッション性も高いので高さや重さのある一本歯下駄なら足の甲全体に下駄の重さが分散されて非常に心地よい。長時間、長距離を歩いたり走ったりするのにはかなり効果を発揮する。
今まで相当数の鼻緒を作り、一本歯下駄に挿げてきてわかったことが幾つかあるのでそれを紹介したい。
まず、鼻緒は自分の足に合うようにこまめに調整をするということ。調整は前坪(下駄の前方にある穴の部分)で行うのがメイン。後坪はほぼノータッチ。
歩き走りでも締め具合は微妙に異なる。キツすぎるよりは緩めの方がいい。締めすぎると足の血流が妨げられるのだ。
本来、鼻緒とは趾(あしゆび)でつまむものであったのだろう。シューズに慣れ切った現代人にはその感覚が消失してしまいつつあるのかも知れないが、鼻緒に足を入れてみて、足の甲を押さえられるよりも足の指で前坪をしっかりつまめるかどうか、がポイントとなる。
わかりやすいケースで説明すると、登り坂で足が下駄から滑り落ちそうになる人は趾(あしゆび)で鼻緒をつまめていない。鼻緒をしっかりつまめる人は登り坂でも下駄をしっかりホールドして足が下駄からずれ落ちることはない。
転倒しそうになったら趾(あしゆび)の力を抜いて下駄から足を後ろにさっと引き抜く。
鼻緒の締め具合がきついと上の動画のような動きはできなくなる。
多少緩めに挿げていても趾(あしゆび)の力があれば問題なし。
転倒した際に鼻緒がキツすぎると下駄骨折にもなりかねないので、一本歯下駄を履き始めてまもない方は、上の動画の動きができる程度に、鼻緒は緩めにしておいた方がいいかも知れない。
とはいえ、長年一本歯下駄を履いていると、やはり鼻緒の締め具合は好みによるものだと思う。
私自身、多少緩くても気にならない。山を登ったり走ったりするのに一本歯下駄専用ストラップなるものを考案してみたが、こちらも極力緩めにしている。
このストラップは、特に登りを移動する際に足の裏が下駄の台の上でペタペタしないようにという配慮で作られたもの。ストラップに依存して趾(あしゆび)のホールドが効かないようになってしまうとよろしくない。
ストラップもセットした際に足首周辺と足の甲の部分に指一本が入る程度の余裕を持たせて「ゆるふわりん」感覚にしておくのがベター。特に不整地を移動する際に足首もいろんな角度に動くため締めすぎては「遊び」がなくなってしまうのだ。
たかが鼻緒、されど鼻緒…それでも鼻緒なしでは下駄は下駄でなくなってしまう。鼻緒ともいい関係を構築するのがいい。
*SHUGENやスポーツ一本歯下駄の鼻緒調整方法です。
*YouTube動画リスト:一本歯下駄〜One-Tooth Geta
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*ライター:
株式会社GETTA認定アンバサダー
「PEACE RUN世界五大陸4万キロランニングの旅」を走るアドヴェンチャー・ランナー 高繁勝彦
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