一本歯下駄での転倒は危険を伴う。町を歩いていて、トレーニングで走っていて、山を登っていて、絶対に転倒しないという保証はない。それゆえに、一本歯下駄を履いた時点で起こり得る危険は想定しておいて欲しい。
一本歯下駄人口が増えてくれば、一本歯下駄保険というものもあっていいのかもしれないが、一本歯下駄で走ったり山に登ったりする方は、スポーツ保険というものもある。何かあった時のために備えておくのもいい。
私自身、激しく転んだことはないけれど、山で転倒しかけてヒヤッとしたことは何度もある。その際に、一本歯下駄が傾いて鼻緒が伸び切ったケースもある。
「転ばぬ先の杖」という言葉がある。恐らくは、転ばぬ内に杖をついて転倒に備えておけという意味であろう。
いくつかポイントとしてまとめておくと…
1)一本歯下駄を履く前の点検・メンテナンス
・鼻緒の緩みはないか?緩んでいたら前坪を締め直す必要がある。
・歩いた時に異音がする…歯と台の間に隙間ができているかもしれない。歯が抜ける可能性がある。対策はこちら。一本歯下駄は夏場の車の中、冬場の暖房器具のそばに置いておくのはNG。一本歯下駄の木が乾燥して歯が収縮する。木は自然のものだからある程度湿り気が必要。
・長年履いていて歯がすり減っている…一本歯下駄を交換することも考える。購入時に歯の補強ゴムを付ける。
・歯の補強ゴムがツルツルである…濡れた路面やマンホール等の上でスリップする可能性があるので新しいものに交換する。
・鼻緒の前坪は大丈夫蚊?
体重60〜70キロの男性が一本歯下駄で転倒した際、(転倒する勢いにもよるが)横方向に掛かる力は2倍以上の120〜140キロにもなると推測される。この時、一本歯下駄の前坪が引っ張られて抜ける場合もあるし、まともに後ろ方向に激しく転倒すると前坪の麻紐が切れることも起こり得る。特にトレイルの地道の下りでは要注意。
一本歯下駄でマラソンを走るランナー、一本歯下駄で登山をする方は、前坪の補強は必須。前坪の麻紐を二重にするか、麻紐に代えてパラコードなど強度の高いものを使うのが望ましい。事故や怪我を防ぐために何らかの対策を取っておくこともまた大切なこと。
2)一本歯下駄で歩いている時の危険回避策
・不整地の歩き方
★ぬかるみや柔らかい路面:歯が土に埋もれるところ・砂地は特に不安定レベルが高い。下り斜面となればなお危険。一本歯下駄を脱いで裸足になるかサンダルに履き替える。
★木の幹や切り株・小石・岩場のある道:突起物に乗り上げた際に横方向の不安定レベルが上がる。足首の柔軟性の乏しい方は転倒する可能性大。苔の生えた部分はスリップするので目を凝らして歩くところの状況をしっかり確認する。危険を感じたら無理はしない。街の歩道の点字ブロック等でもこれは同じ。
・階段・斜面の歩き方
上りは問題ないのだが、下りでは重心が極端に前や後ろに行き過ぎぬよう、バランスを考える。下りでは腰が引けてバランスが悪くなるものだが、つま先を少し上げてかかと方向に重心を意識する。階段では歯がきちんと階段のステップの真ん中に着地するように注意。足元ばかりを見ていてはバランスを崩してしまう。
3)ストラップや紐等で足首・足の甲を固定する場合
・一本歯下駄ビギナーが足首や足の甲をストラップ・紐等で固定することはおすすめしない。転倒した場合にたいてい捻挫等の怪我が生じるし、ある程度一本歯下駄で歩くことに慣れておく必要があるからだ。
・ストラップや紐で固定するにしても必ず指一本が入るくらいのスペース(遊び)をとっておきたい。平地以外の斜面を歩き走りする際に足首も足の甲も動き続けるため、タイトに締めつけることはその自由を制限することになる。
4)その他
転ぶ前に次の一歩を出して体勢を安定させることができればまず怪我はしない。
そのためには、全身をほどよくリラックスさせ、足首を始め体全体の関節を柔らかく、しなやかに使うのがいい。
転びそうになったら、まずは足を一本歯下駄から真後ろにスライドさせる。すべり台のように足を鼻緒からするりと抜く練習をしておけばいい。
一本歯下駄はたしかに「履物(=フットウェア)」なのだが、事あるごとにこまめに履いて、ココロとカラダが対話する時間を持つことで一本歯下駄は最もすぐれた「乗り物(=移動手段)」になるのである。
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