【一本歯下駄合宿開催報告】
「記憶の匂い」という極めて魅力的な言葉がある。
人も動物も物質も、ある場所に一度存在すると何年・何十年を経てもそこにそれが存在した痕跡が必ず残りそこに記憶が宿る。
合宿というものを考える時に僕が最も意識するのがこの「記憶の匂い」となる。
合宿という非日常には「記憶の匂い」が宿りやすい。
自然の中での非日常の共有の中に「しあわせ」とは何なのかが染み込んでいくその時間の中に「記憶の匂い」がある。
一本歯下駄合宿をおこなっている京都市左京区久多は人口80人でそのほとんどの方が70歳以上という自然の中に人がいる地域である。
2016年10月1日2日に開催した一本歯下駄合宿では大江能楽堂の能楽師である大江さんに、能の重心の定めかた、そのためのすり足、腰の入れかたをご教授頂いた。
能の動きは自分という存在を消しさり、観衆に「人間」という自分たちと同じ存在だと認識させてはいけないという。
そのためには軸はブレず、無駄な動きはいっさい排除していき、生身の人間とは別の動きが必要となる。
そうしたお能の動きはスポーツやランニングにおける二軸動作、二軸走法、なんば走りといったものに非常に共通してくる。
お能を学ぶことは一本歯下駄のポテンシャルを引き出して使うことに非常に重要になってくる。
世阿弥のお能は人間と植物の連続性が取り上げられているというが木材でつくられた一本歯下駄で走るという行為もまた人間と植物の連続性としての行為なのかもしれない。
一本歯下駄合宿では能楽師の大江さん、ミュージシャンの小倉ユウゴさんといったゲストの方の時間以外には主に一本歯下駄に通じるトレーニングについて行っていく。
何より一本歯下駄合宿という合宿形式ならではなのはトレーニングのつくり方を伝えることができるという点である。
股関節、骨盤
体幹
胸郭肩甲骨
を如何に相互作用させていくか
足裏、足首 脇、首 という重要部分を一本歯下駄に任せていくトレーニングと一本歯下駄を履く積み重ねの中で実感できる効果をその場で実感するための一本歯下駄を使わないトレーニング。
そうした第一構造
そこに第二構造として
身体構造と重力 脱力 ジャイロ シェイク 衝撃
という要素を加えての掛け算的なトレーニングの生み出しかた。
ヨガやその他のらせん状の動きについてエンターテイメント界のスーパースターであるマドンナや佐々木小次郎を例にしての紹介。
ステビンズからのヨガ、スウエーデン体操からの流れ。
デルサルトからの流れ
螺旋が大切な中、直線も大切というのを武蔵と小次郎から。
シェイク、揺れるということが如何に応用が効くのか、アメリカの研究では伸ばすストレッチよりも揺らす方が圧倒的に柔軟性が向上すると10年前から結論が出て入るという話。
ここが一本歯下駄で柔軟性やしなやかさをつける大きなヒントとなること。
衝撃を日常に取り入れたことで何度も輝きを取り戻すイチロー選手から、トレーニングに衝動を掛け合わせる重要性について
そうした第2部分をしっかりと念頭に置いた中、呼吸法、発音、左右の重心バランス、イマジネーション
という第三部分をいれるかどうかを考えていく。
特に「オ」を中心とした母音や舌ベロを出すということが如何に一本歯下駄と相性が良く、しなやかな動き、運動神経に直結していくかについて。
2日目には放牧されている馬に、一本歯下駄を飼い主の方に体験していただくことと交換として乗せてもらい、合宿参加者全員での乗馬体験もしました。