宮崎要輔ブログ

走れば走るほど速くなる選手は何が違うのか?桐生選手と高野進さんをヒントに

「走れば走るほど速くなる選手は何が違うのか?」という問いはスポーツに向き合った人なら誰もが練習中などに一度は感じた問いなのではないでしょうか?

才能や遺伝的な素質のような気もする一方、類い稀なる努力や或る日突然速くなるような人もみかける速く走るという能力。

走れば走るほど、練習すればするほど速くなる選手は果たして何が違うのでしょうか?

今回はお子さんをお持ちの方にも現役選手や指導者の方にも少しでも活かしていただけたらと思い、考察を書いていきたいと思います。

高校時代に圧倒的に速くなった選手の一人といえば

桐生選手が思い浮かぶ方が多いと思います。
何故桐生選手は高校時代に誤解をおそれずいえば彼だけが圧倒的に速くなったのでしょうか?


はじめて当時高校生だった桐生選手の練習風景をその場でみたとき「これは伸びるはずだ」と興奮がやみませんでした。

桐生選手は腿上げ、スキップ、バウンディングをはじめほぼ全てのメニューで大腰筋に刺激がいく動きを常に当たり前のようにしていたからです。

大腰筋は股関節の屈曲動作、つまり大腿(太もも)を持ち上げる動作や骨盤の前傾に働く筋肉で、人類に二足歩行をもたらした筋肉としても近年特に注目されている筋肉です。

大腰筋

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真1参考)大腰筋

 

その大腰筋を常に桐生選手は人と同じトレーニングをしていても彼だけが大腰筋を鍛えていける動きをしているので、チームで同じメニューを行っていても彼だけが効果の違うトレーニングとなっているといえます。

桐生選手の練習動作は常につま先が上を向き、膝が腿より常に高い状態にて行われます。これによって大腰筋や内転筋を同じトレーニングメニューをしても彼だけ効果が別のものとなっていきます。

大腰筋トレーニング

 

 

 

(写真2参考)

 

末岡選手との大腰筋トレーニングとしての腿上げ風景。桐生選手は常にこのトレーニング時と同じような脚の上げ方をあらゆるメニューにて実施している。
ただ、多くの選手が「よし!!早速、桐生選手のようにつま先を上に向けて、膝を腿より高く上げよう」と取り入れようとしても継続するのは中々難しいと思います。

 

そうした中で大きなヒントとなるのが日本での大腰筋の研究出発の話に欠かせない高野進さんのエピソードです。

1992年のバルセロナオリンピック400mにて決勝進出を果たした高野進さんの筋力を計測したところ大学生選手とほとんど差はなく、唯一圧倒的に違いがでたのが大腰筋だったというエピソードがあります。

 

ここで大事なのは大腰筋が速く走るのに深く関係しているということ以上に何故、高野さんは大腰筋がそこまで発達したかということです。

「良いフォームを常に意識して走る」というのが高野さん本人からの話ですが、やはりここは400mという競技が非常にリンクしてくるところだと思います。

400mを全力で何本も走ることで鍛えられているのではないかと考えられる筋肉が大腰筋とあわせて腸腰筋とされることが多い腸骨筋です。

大腰筋 腸骨筋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真参考3)腸骨筋

 

・腸骨筋は骨盤についているが腰椎にはついておらず、腰椎の安定性に関与しているのは腸腰筋の中で大腰筋だけであること

・筋電図やワイヤ筋電で大腰筋以上に腸骨筋の動きや働きをみるのは困難なこと

そうした理由から大腰筋と比べ不遇の扱いを受ける腸骨筋ですが高野進さんの大腰筋が圧倒的に優れていたのは、先にこの腸骨筋が発達したことで導かれたものだと考えています。

というのもこの腸骨筋がしっかりと使える身体になると前述した桐生選手の動きと同じ大腰筋を鍛えるための動きが無意識の中で行えるようになるからです。

(腸骨筋が使えるようになると股関節の屈曲動作は飛躍的に向上し、斜め上に弾む感覚で膝が上がるようになります。人によっては走る時にお尻で弾んでいく感覚を感じる人もいます。)

400m前後の全力走を人の何倍も努力した高野進さんは腸骨筋が人よりも発達し、それによってあらゆるトレーニングにおいて大腰筋を鍛えていく動きが可能になったのではと思います。
腸骨筋を鍛えることで股関節の屈曲動作を向上させ、あらゆる動作で大腰筋を鍛えれる動作を獲得した選手は足が速くなりやすいとともにハムストリングをはじめとした筋肉への負担が減り、怪我が減ることで成長していきます。

走れば走るほど速くなる選手とは、

①あらゆる動作にて大腰筋に刺激を与えることが出来ている選手

②そうした大腰筋を鍛える動作は腸骨筋を鍛えていくことで股関節の屈曲動作を獲得することで実現できる

といえます。

 

腸骨筋の鍛え方ですが身体を壁に斜めに預けるC字足振りが効果的です。

 

大腰筋 腸骨筋 足振り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真参考4)末岡選手による足振り 2014年撮影より

①軸足側を壁側にして壁や椅子等に必ず軸足側の手を添えて両足とも膝を曲げずに小さく、ゆっくり、片足をCの字の半円を描くように外側に一往復5秒かけて振ります。
(バランストレーニングではないので必ず手で壁や椅子等につかまることが大事です。腸骨筋を鍛えていきたいので速い動きや大きい動き、屈曲を伴う動き、バランスをとろうとする状態は避けてください。普段使っている筋肉を如何に使わないかがポイントです。)
②片足を3分以上連続で続けていき、軸足のお尻が効いてきたら腸骨筋を鍛えることができています。
骨盤を常に背伸びをしている時の姿勢のように立てていること、胸を張っていることが重要です。トレーニング中は姿勢に意識を集中してください。

③トレーニング効果を上げたい方、時間を少なくして効果を上げたい方は軸足側の反対の手で壁等をつかんでいる軸足側の手の手首を掴んだ形にて顔を前にしてください。また、壁等と距離をおおめに取り、身体を斜めにすることでより腸骨筋に刺激を入れることができます。
足振りのようなこうした腸骨筋を鍛えるトレーニングを続けていくことで走るトレーニング効果が反映しやすい、怪我がしにくい身体をつくっていくことができます。

友だち追加

関連記事

TOP