◀ マラソン実践大図鑑 FUELING AND THE WALL
30kmの壁の、半分は燃料切れ。

マラソンの補給とエネルギー切れ完全ガイド

WHY YOU STOP AT THIRTY
フルマラソンで多くの人が経験する「30kmの壁」。その正体の少なくとも半分は、体内に蓄えた糖が尽きることにある。走力の問題ではなく、燃料の問題だ。だからこそ走り込みでは解決せず、補給の設計で解決できる。何をいつどれだけ摂るか。練習で何を試しておくか。胃が受け付けなくなったらどうするか。この一本で、補給のすべてを扱う。
30kmの壁ジェルの使い方水分と電解質胃腸トラブル練習で試す
DEFINITION ─ READ IN 60 SEC

エネルギー切れとは何か

要点の要約

フルマラソンで身体が動かなくなる原因の少なくとも半分は、体内に蓄えた糖が尽きることにある。これは走力の問題ではなく、燃料の問題だ。

人の身体は、糖(グリコーゲン)と脂肪の両方をエネルギー源にする。だが速く走るほど糖の割合が増える。そして体内に蓄えられる糖の量には限りがあり、多くの人でフルマラソンの後半に枯渇する。枯渇すると身体は脂肪に切り替えようとするが、その変換は効率が悪く、同じペースを保てなくなる。これが30kmの壁の正体の半分だ。走り込みでは解決しない。補給の設計で解決する。

THE PLAN

補給の基本設計いつ・何を・どれだけ

下の表は一般的な目安です。必要量は体重・発汗量・ペース・気温で大きく変わるため、必ず練習で調整してください。

タイミング摂るものポイント
前日食べ慣れたもの、適量脂質の多い食事と食べすぎを避ける。消化に時間がかかるものは翌朝に残る
3時間前食べ慣れた朝食(糖質中心)消化の時間を確保する。直前に詰め込まない
スタート前水分をコップ1杯程度飲みすぎるとトイレが近くなる。整列前に済ませる
5km地点〜各エイドで給水喉が渇く前に、少量をこまめに。一気飲みしない
10km前後1本目のジェル等まだ余裕があるうちに。必ず水と一緒に
以降 5〜7kmごとジェル等を追加目安は30〜45分に1回。切らさないことが原則
20km・30km前後塩分・電解質汗で失われるのは水分だけではない
35km以降受け付けるものを少量ずつ胃が弱る時間帯。無理に詰め込まない

※ 上記は一般的な目安であり、個人差が大きい領域です。必ず練習で試して自分に合う量とタイミングを見つけてください。持病のある方、塩分制限のある方、不安のある方は医師にご相談ください。

WATER AND ELECTROLYTES

水分と電解質飲めばいい、ではない

水分補給は「たくさん飲む」ことではない。失われる量に見合った量を、失われる成分ごと補うことだ。

原則
喉が渇く前に、少量をこまめに。渇きを感じた時点ですでに不足が始まっている。一気に大量に飲むと胃が受け付けず、かえって気持ち悪くなる。
冬の落とし穴
寒いと喉が渇きにくい。そのため給水を飛ばしがちだが、冬でも汗はかいている。脱水に気づかないまま進むのが冬のレースの怖さ。
電解質
汗で失われるのは水分だけではない。ナトリウムなどの電解質も一緒に失われる。水だけを大量に摂り続けると体内のバランスが崩れることがあり、危険な状態につながる場合もある。
暑い日
発汗量が跳ね上がる。給水所ごとに確実に取り、水をかぶって体表を冷やすことも有効。ただし飲む量は自分の感覚に従い、無理に増やしすぎない。
サインを見る
頭痛、めまい、吐き気、尿が出ない——これらは危険信号。無理をせず、救護所に申し出る。
STOMACH TROUBLE

胃腸トラブルの原因と対処誰も書かないが、誰もが困る

レース中の胃腸トラブルは、非常に多くのランナーが経験する。そして原因の大半は事前に防げる。

五つの原因

  • 本番で初めて口にするもの──エイドの食べ物も含む。これが最大の原因
  • ジェルを水なしで摂る──濃度が高いまま胃に入ると負担になる
  • 短時間に大量の水分──一気飲みは胃が受け付けない。少量をこまめに
  • 前日の食べすぎ・脂質の多い食事──消化に時間がかかるものは翌朝に残る
  • 朝食のタイミング──スタート3時間前が目安。直前に詰め込まない

走行中に気持ち悪くなったら

まずペースを落とす。血流が消化に回らないほど負荷が高い状態かもしれない。次に補給を一度止め、水を少量だけにする。それでも改善しなければ歩く。無理に押し切ろうとすると、そこから先はもっと苦しくなる。

強い腹痛、繰り返す嘔吐、意識が朦朧とする、尿が出ないといった症状があれば、迷わず救護所や医療スタッフに申し出てください。慢性的な胃腸の不調がある方、持病のある方は事前に医師にご相談ください。本セクションは一般的な注意点の整理であり、医学的な助言ではありません。

TEST IN PRACTICE

練習で試すということ他人の正解は、自分の正解ではない

このページに書いたことの大半は、本番前に長い距離の練習で試しておけば確かめられる。そして試さないかぎり、自分にとっての正解は分からない。

30km走で本番と同じものを
どのジェルが合うか、走りながら飲み込めるか、どのくらいで気持ち悪くなるか。本番と同じものを同じタイミングで摂って確かめる。
気温を変えて試す
暑い日と寒い日では必要量がまるで違う。冬の練習で「飲まなくても平気」だった量は、夏には足りない
携行方法も試す
ポケットに何本入るか、走りながら開封できるか。開けられないジェルは持っていないのと同じ
胃の限界を知る
どこまで入れると気持ち悪くなるか。この線を知っておくと、本番で無理をしなくて済む。
GLOSSARY

レース用語ミニ辞典知っておくと要項が読める

30kmの壁THE WALLフル後半で急に身体が動かなくなる現象。体内の糖の枯渇と筋の損耗が重なって起きる。
ハンガーノックBONKエネルギーが枯渇して身体が動かなくなる状態。補給の間隔が空きすぎると起きる。
グロスタイムGROSS号砲から計測した時間。関門の判定に使われることが多い。
ネットタイムNET自分がスタートラインを通過してから計測した時間。大規模大会ではグロスと数分から十数分ずれる。
関門(カットオフ)CUT-OFF指定時刻までに通過できないと先へ進めない地点。完走の可否を決める。
イーブンペースEVEN PACE最初から最後まで同じ速度で走る配分。フルでは最も効率がよいとされる。
テーパリングTAPERINGレース前に走行距離を段階的に減らし、疲労を抜いて本番に備えること。
エイドステーションAID給水・補給・救護の拠点。混雑するのでテーブルの奥側を狙うと取りやすい。
固有受容感覚PROPRIOCEPTION関節や筋、足裏から得る自分の身体の位置・傾き・圧の感覚。接地の質を左右する。
腱優位TENDON-DOMINANT筋で固めず腱の弾性で衝撃をいなし、次の一歩へ返す身体の使い方。
ハンガーノックBONKエネルギーが枯渇して身体が動かなくなる状態。補給の間隔が空きすぎると起きる。
脱水DEHYDRATION体内の水分が不足した状態。冬は喉が渇きにくく気づきにくい。頭痛やめまいは危険信号。
カーボローディングCARBO-LOADINGレース前に糖質を多めに摂り、体内の蓄えを増やす方法。合わないと不調につながるため練習で試す。

※ 用語の運用は大会ごとに異なります。必ず参加する大会の要項をご確認ください。

BODY BUILDING

長時間を走り切る身体づくり足裏から、十万歩に耐える身体へ

足裏の質が、十数時間分積み上がる

100kmは十万歩を超える。一歩あたりのわずかなブレーキが、その回数だけ積み上がる。足裏の固有受容感覚が鋭ければ接地が最適化され、無駄な減速が減る。ウルトラでは効率の差が数時間の差になる

腱で弾めば、脚が最後まで残る

着地衝撃を筋の力で受け止め続ける走りは、フルでも脚を消耗させる。それが100kmになればどうなるか。アキレス腱やふくらはぎの腱の弾性で衝撃をいなす腱優位の身体は、同じ速度をより少ない力で維持できる。

崩れた姿勢で走り続けないために

長時間走で最も危険なのは、フォームが崩れたまま数時間走り続けることだ。骨盤から上に一本の軸が通っていれば、疲れても歩幅とピッチを保ちやすく、負担が一点に集中しない。故障の多くはここで決まる。

一本歯下駄で、一歩の質を変える

不安定な一本の歯の上に立つと、身体は足裏の感覚を研ぎ澄まし、筋で固めるのをやめて腱で微調整を始め、中心に軸を探す。走行距離を増やさずに一歩の効率を上げられるのは、ただでさえ練習量が多くなるウルトラに向けて現実的な選択肢になる。

▶ さらに詳しく:マラソン・長距離ランナーと一本歯下駄|腱弾性で走りを変える45日プロトコル腱優位システム完全解説ヒラメ筋と一本歯下駄バランストレーニングの選び方完全ガイド

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市民ランナーの走りを改善する一本歯下駄理論あります。

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FAQ

よくある質問 Q&A

30kmの壁とは何ですか?

フルマラソンの30km前後で急激に身体が動かなくなる現象です。原因は複数ありますが、そのうち少なくとも半分は体内に蓄えた糖(グリコーゲン)が尽きることにあります。糖が枯渇すると、身体は脂肪をエネルギー源にしようとしますが、その変換は糖より効率が悪いため、同じペースを保てなくなります。走力の問題ではなく燃料の問題なので、補給の設計で改善できます

ジェルはいつ、どれくらい摂ればいいですか?

一般的な目安は30〜45分に1回、距離で言えば5〜7kmごとです。最初の1本は10km前後、まだ余裕があるうちに摂ります。枯渇してから摂っても回復には時間がかかるため、切らさないことが原則です。ただし必要量は体重・ペース・気温で大きく変わるので、必ず練習で自分に合う量とタイミングを見つけてください。

ジェルを水なしで飲んでも大丈夫ですか?

おすすめしません。ジェルは糖の濃度が高く、水なしで胃に入ると濃度が高すぎて吸収が遅れ、胃に負担がかかります。必ず水と一緒に摂ってください。給水所の手前でジェルを口にし、給水所で水を飲むという流れを作っておくと確実です。

水分はどれくらい飲めばいいですか?

必要量は体重・発汗量・気温で大きく変わるため、一律の数値は示せません。原則は喉が渇く前に、少量をこまめにです。一気飲みは胃が受け付けません。冬は喉の渇きを感じにくく脱水に気づきにくいため、寒くても給水を飛ばさないでください。逆に飲みすぎも問題を起こすことがあるため、事前の長時間走で自分の適量を把握しておくことが最も確実です。

塩分や電解質も必要ですか?

汗で失われるのは水分だけではありません。長時間の運動ではナトリウムなどの電解質も失われます。水だけを大量に摂り続けると体内の電解質バランスが崩れることがあり、これは危険な状態につながる場合があります。塩分タブレットや電解質入りのドリンクを、20km・30km前後を目安に取り入れてください。持病のある方や塩分制限のある方は、事前に医師にご相談ください。

レース中に気持ち悪くなったらどうすればいいですか?

まずペースを落とします。血流が消化に回らないほど負荷が高い状態かもしれません。次に補給を一度止め、水を少量だけにします。それでも改善しなければ歩いてください。無理に押し切ろうとすると、そこから先はもっと苦しくなります。強い腹痛、繰り返す嘔吐、意識が朦朧とする場合は迷わず救護所へ申し出てください。

胃腸のトラブルはなぜ起きるのですか?

主な原因は五つです。①本番で初めて口にするもの(エイドの食べ物を含む。これが最大の原因)、②ジェルを水なしで摂る、③短時間に大量の水分を一気飲みする、④前日の食べすぎや脂質の多い食事、⑤朝食のタイミングが遅すぎる。いずれも事前の長時間走で試しておけば回避できます。

前日と当日朝は何を食べればいいですか?

前日は食べ慣れたものを適量。脂質の多い食事と食べすぎは消化に時間がかかり翌朝に残ります。当日朝はスタート3時間前を目安に、食べ慣れた糖質中心の朝食を。直前に詰め込まないでください。なお試合前に糖質を多めに摂る方法もありますが、やり方が合わないと不調につながることもあるため、本番でいきなり試さず練習で確かめてください。

エイドの食べ物は食べていいですか?

楽しみのひとつですが、初めて口にするものは少量にしてください。胃腸のトラブルの最大の原因が「本番で初めてのもの」です。地元の食が振る舞われる大会も多くありますが、完走を優先するなら口に入れる量を意識的に抑える判断も必要です。

補給の練習はどうすればいいですか?

30km走などの長い練習で、本番と同じものを同じタイミングで摂ることです。どのジェルが自分に合うか、どのくらいの量で気持ち悪くなるか、走りながら飲み込めるか。身体の反応には個人差が大きいので、他人の正解が自分の正解とは限りません。これだけは事前に確かめるしかありません。

一本歯下駄はマラソンの練習に役立ちますか?

役立ちます。フルマラソンは四万歩を超えるため、一歩あたりのわずかな効率差がその回数だけ積み上がります。一本歯下駄は不安定な一本の歯の上でバランスを取ることで、足裏の固有受容感覚を高め、衝撃を腱でいなす動きと、ぶれない軸を同時に育てます。走行距離を増やさずに一歩の質を変えられる点が実用的です。一本歯下駄GETTAは合同会社GETTAプランニングが開発・製造・販売しています。

一本歯下駄の使い方を直接教わることはできますか?

はい。全国230名を超える認定インストラクターが、足裏の感覚・腱で弾む動き・姿勢の軸を、一人ひとりの身体に合わせて指導しています。詳しくはインストラクターネットワークのサイト(instructor.getta.jp)をご覧ください。

FOR RUNNERS

42.195kmを支える三つの下駄GETTA / TOTONOE / REDEZA

足裏の解像度、腱で弾む動き、ぶれない軸──同じ速度をより少ないエネルギーで出せる身体づくりを、一歩ごとに足裏から始める道具。目的に合わせて、三つの下駄がある。

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一本歯下駄TOTONOE
CONDITION ─ 一本歯下駄
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整える。声が変わる。呼吸が深まる。歯に高強度ゴムを備えたリカバリー・コンディショニングモデル。走ったあとに身体を整えたいランナーや、初めての一足にも。
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一本歯下駄REDEZA
APEX ─ 二枚歯下駄
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蹴らない。ためない。捻らない。二枚歯が足首の屈曲を制限し、微細な重心移動だけで身体を導く到達点。武術的な身体操作を求める上級者へ。
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