松坂大輔復活するには

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【開きが早いはどこからくるのか】
ソフトバンクの松坂大輔投手が2日、シーズン最終戦となる楽天戦に3648日ぶりの日本プロ野球での1軍マウンド復帰となった。結果は4連続四死球で無死満塁のピンチを招くなど1イニングを投げ5失点と苦しいもので多くのメディアでプロ野球OBから「肩の開きが早いのでコントロールが悪い」と指摘された。

 

「1死後に茂木、アマダー、銀次に3連打を浴びたわけですが、いずれも直球がシュート回転して甘く入った。左肩が早く開いてしまうのが原因です。
下半身の体重移動が少なく、左足に重心が移る前に上半身だけで投げてしまうから余計にそうなる。直球の最速が144キロ止まり、伸びもキレもないのもそれが原因。
現段階ではまだ一軍で投げるのは厳しい」
というのはあるプロ野球OBの評論家によるコメントであるが、多くの解説者や評論家がこのように「開きが早い」という現象にフォーカスをあてて松坂大輔投手の登板を解説している。
僕はスポーツの世界において現象だけで話されるものがある時、以下のように定義をして考察している。
現象だけを話す=意識の問題だと考えられている
そして僕達の仕事というのはこの意識の問題だと思われているものを解明していくことである。
「開きが早いはどこからくるのか」
今回はこのことについて書いていこうと思う。
長いあいだ「開きが早い」というのはグローブ側の腕の手を伸ばすことに対する意識と足腰の問題だと考えられてきた。
意識の問題であれば「開きを遅くするための」意識と意識を形にするための反復練習を繰り返す。
足腰の問題として捉えた時は「走り込みが足りない」ということで走り込みを繰り返す。
こうしたことが長い間続いてきた。
僕はこのことを「多くの競技経験者がなんとなくわかっているが解明されていないことが生み出す悲劇」だと認識している。
何故悲劇なのか?それはなんとなくわかっている感覚が業界全体であるからこそ、多くの投手がそこで行き詰まり現役を終えてきたからである。
先ず野球界において「走り込み」という言葉ほど曖昧なものはない。
人によってはそれが長距離走をさす言葉だと認識をする人もいれば、ダッシュをひたすら走ることをさす言葉だと認識をする人もいる。
この言葉の曖昧さによる認識のズレが多くの現場において望まぬ指導や結果を生んできた。
現在まで多くの現場で無駄な「走り込み」がなされてきたことで現在では「走り込み」そのものを否定するという第二の悲劇が始まろうとしている程このことの問題は根深い。
この「走り込み」をしっかりと選手達の結果へと繋がるように定義するとすれば
①長距離を走る持久走ではない。
②20m〜120mの短いダッシュを繰り返すものではない。
③150m〜250mの短長距離を繰り返すものである。
④150m〜250mの短長距離であればアメリカンノック等での方法も立派な「走り込み」である。
この定義に沿った走り込みをしてきた投手というのが工藤公康投手であり、上原浩治投手であり、そして今年日本球界に復帰し、同世代でありながら松坂投手とは対象的な活躍をした和田毅投手である。

例えば和田毅投手は早稲田大学時代に4年間で地球1周半分ポール間をダッシュしていたといわれている。
何故、「走り込み」の定義を上記のようにし、この定義による走り込みが必要なのかであるがそれは腸骨筋を鍛えることができるというのが一番の理由である。
グローブ側の腕の手を伸ばすことに対する意識を意識通りに実現するのが腸骨筋であり、投球時の着地した脚側の腸骨筋が踏ん張り、何処まで粘ることが出来るかが「開きを抑え、開きが遅いを生み出す」逆にこの腸骨筋が弱いとどんなに上体が強く、内転筋群をはじめ足腰のその他が強かろうが「開きが早い」となる。
球速が速く、コントロールが悪い投手というのは球速を生み出すだけのその他の筋肉群とその動作に比べて腸骨筋が弱いことでおこっている。
(故にコントロールが悪い投手に走り込みが必要というのも正解ではないものの時には功を奏すのはこうしたことからなっている。)
僕の現場で腸骨筋を鍛えはじめた投手に起こる変化は以下である。
①ゆったりと腕を振っても速い球が投げられる。
②力をいれなくても、全力でなくても今まで全力で投げていた時の球速が出る。その余裕も含めてキレとコントロールにつながっていく。
こうしたように腸骨筋を鍛えることで「開きが早い」を改善し、「開きが遅い」、「球のでどこが遅くてわかりにくい」にし、「キレとコントロール」を生み出すことへと繋がっていく。

 
松坂大輔投手も平成の怪物と呼ばれていた高校時代はアメリカンノックという形で腸骨筋を鍛えることができていた。
少年時代の剣道によって育ちやすい環境が整った背筋群、アメリカンノックで培われた腸骨筋に横浜高校において松坂大輔特別メニューとなった12種類のウエイトトレーニングが見事にはまったことで平成の怪物の基礎は完成された。
プロ入り後の松坂大輔投手の投球フォーム、メジャーに渡った後の投球フォームと追ってみていくとすでにメジャーに渡る前から腸骨筋が弱くなっていたのがみてとれる。
プロ入り後の松坂大輔投手は投げ込みやウエイトトレーニングは熱心であったが走り込みは本当にしてこなかったのではないだろうか?
というのが見て取れるほど年数を重ねれば重ねる程、腸骨筋が弱くなることでの粘りの減少がおきている。
腸骨筋が弱いからこそ投球時の足の着地は開いた形になり、それによって右腕のフィニッシュも崩れる。
肩や肘、内転筋群をはじめとした股関節がどんなに良くなろうと回復しようと腸骨筋を鍛えることができない限りはキレとコントロールは勿論の事、怪我だけを繰り返してしまう。
ただ、今年の5月からの松坂投手をみればソフトバンクには肩や内転筋群のアプローチのノウハウはあり、腸骨筋さえしっかりと鍛え直せばまだ可能性はあると僕は思っている。
肩や内転筋群は良くなっているからこそ、松坂投手もキャッチボールや立ち投げにおいての投げる感覚やコントロールには確かなことを感じているのは本心なのだと思う。
ただ、だからこそキャッチャーを座らせて投げる時という腸骨筋の重要性が増した時にキャッチボール時にある自身の感覚とのズレが大きすぎるのだろう。
腸骨筋へのアプローチを獲得し、本格派にしろ技巧派にしろふてぶてしい松坂大輔をもう一度年間を通してみてみたい。