陸上短距離界が一皮むけた日

【陸上短距離界が一皮むけた日】
リオデジャネイロオリンピックでの男子4×100mリレーでの銀メダル獲得、その結果が生まれるまでのロンドンオリンピックからの今日までの4年間にどんな変化があったのか。
それを象徴する日の記憶を辿っていくと3年前の秋にこんなことがあった。
それはウサインボルト選手の所属するクラブチームのコーチであるシャンコーチを迎えてコーディーネーターを朝原さんがつとめロンドンオリンピック100m代表の江里口選手、福島千里選手、当時高校生の桐生選手にシャンコーチが直接指導するというものだった。
シャンコーチがボルトをはじめとしたジャマイカのトップ選手が行っているトレーニングやそのトレーニングにおいて重視している点を3人のトップアスリートに直接指導しながら3人の動きやリズムを指摘していく。
いくつかのドリル、クリニックメニューの他にそこでは100mを走る際にジャマイカで大切にしている足のあげ方があった。
これまで多くの日本の指導現場では後方にある脚をなるべく速く前に膝を突き出すように出し、加速とともに段々と大きく脚を振り出すようにすることでストライド(歩幅)を伸ばしていくというようなものだったがジャマイカは違った。
後方にある脚の踵をお尻めがけてつけにいく。
つけにいくことで勝手に骨盤が前方にはいっていき、それによって脚は勝手に前えと大きく振りだされる。
後方の脚を前に出すのを速く大きくする意識ではなく、後方の脚をお尻に踵をつけにいく。
そうすればあとは身体が勝手に速く走るために動くというものだった。
そうしたシャンコーチの指導があった次の日に荒川さん、山本さんと話していると「シャンコーチが話してくれた走りは今までの走りよりもお尻の筋肉をはじめ今までよりも多くの筋肉を大幅に使えるようになり、それはジャマイカ速くなるよね。」というようなフィードバックがあったのを記憶している。
これまでジャマイカやアメリカのアフリカ系の選手達との差は人種的な特徴や遺伝の差といった身体能力においての差はあれど何処かで走法やトレーニング方法含めて科学的、技術的なことは日本が上ではないかと誰もが心の中にあった中、そうではないと確信が持てた内容だった。
ジャマイカの技術や走法、科学的な要素や視点に敬意をもったあの日が陸上短距離界が一皮むけた日だったのではないかと思う。
身体面でなげく前にまだまだやれることは沢山ある。
あの日から3年経った今、この1年選手達のインタビューや走りをみているとあの日シャンコーチが話した走りのポイントは多くのトップアスリートが重要視するポイントとなり更に選手個々が昇華していく形で日本チームに染み込んでいったのがよくわかる。

 
技術は日本が世界でもトップレベルであるという思い込みを捨てた時、スポーツの現場に限らず多くの現場にて革新が起こるのではないだろうか。
今回の銀メダルはそんなことを改めて考えさせてくれた。

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